竹取島伝説
この竹取島には、とある伝説があるのです。
竹取物語を知っていますか? ええ、そうです。あの有名な「かぐや姫」の物語です。月に帰る前に、彼女が地上の人間に何を残したのか。それは、不老不死の薬です。受け取ったのは、彼女に熱烈に求婚した帝と、地上で彼女の世話をした老夫婦でした。帝はその薬を燃やしてしまいました。愛するかぐや姫のいない世界で生き長らえても仕方がないと思ったのでしょう。富士山の由来は、帝が不死の薬を燃やした山だというものなのですよ。
さて、しかし老夫婦は、娘のように可愛がってきたかぐや姫に、もう一度会えないかと考え、その薬を飲んでしまったそうです。不老不死になった彼らは、都で迫害され、地方へ地方へと逃げてゆきました。けれども逃避行にも限界はあります。そこで、二人が選んだのは、名前もない小さな三日月型の島でした。
いつしかその島は、「竹取島」と呼ばれるようになりました。満月の美しい夜、その島では、古式ゆかしい着物を着た老夫婦が、訪れた者に語ってくれるそうです。
それはそれは美しい、月から堕とされたつみびとの話を━━
竹取島という名前は、勿論この伝説から来たものであります。
この自然の美しい島は、夜になると人間の忘れてしまった闇に覆われます。その闇の中では、古来のように言の葉が言霊となって力を持ち、伝説や伝承が生き、精霊や魑魅魍魎の類いが揺蕩っています。
そうそう、自然が美しいとは言え、一部は”未だに”荒れていますから、足元には気をつけてくださいね。竹取の翁がこぼした、不死の薬の話。
それを聞いた人達が、島を掘り返してしまったそうですから。
ここは、竹取島。
夢と、まぼろしと、神話の島。
これはそんな島で、赤い、赤い夢を見続けるものたちの、物語なのです。
この資料について
この資料はやおかね氏が島民のひとりである語り部から聞いて書き起こし、脚色したものです。とても読みやすい資料となっており、竹取島の伝説をおいはじめるきっかけとなる最初の伝説としてぴったりでおすすめです。
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